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沖縄県宮古島市

池間島は、沖縄県宮古島市の離島で、宮古島本島の北に位置しています。周囲約10km、豊かなサンゴ礁とエメラルドグリーンの海に囲まれた、宝石のような自然と文化が残された小さく美しい島です。宮古島とは池間大橋(1992年開通)でつながっており、市街地からは車で30分ほどの距離にあります。人口は650人程(2020年10月現在)、高齢化率は50%に届こうとする、過疎高齢化が進行している地域です。1960年頃まではカツオ漁業でたいへん栄えた漁師の島で、当時、池間島の漁師たちはカツオを追って、ボルネオをはじめ南太平洋の島々へ出かけていきました。その漁師たちとゆかりの深い、ポリネシア・メラネシア・東南アジア地域では、古くからテリハボクの種から採るタマヌオイルが伝統的な薬として使用されていました。

島の自然と暮らしを再生するための
仕組みを
試行錯誤する中で、
島に昔からある
テリハボクの
可能性に出会いました。

過疎高齢化が進行する島の暮らしの中で、いちばんの問題は、若い世代が島を出て行ってしまうことです。若い世代の不在は、集落の維持活動や、伝統行事や祭祀などの継続、小中学校の存続が難しくなるだけでなく、島の暮らしを根底で支えてきた自然環境や景観の悪化とも無縁ではありません。かつて集落や畑を台風や北風から守り、豊かな海を育んできた海岸林をもう一度再生させようと取り組んでいた植樹活動の中から、一番多く育てていたテリハボクの種に注目します。テリハボクは、宮古島では古くから防風林や街路樹として植樹され、非常に豊富な資源量がありますが、これまで落下した種の活用はされてきませんでした。このテリハボクの種から「タマヌオイル」を作ることで、島の自然を積極的に守りつつ、誰もが関わりを持てる仕事・新たな産業を作り出す理想的な循環を生み出すことができるのではないかと考えました。

池間島の美しい自然と、そこにある
暮らしを
未来に繋いでいくために。
目指すのは、よそから奪うことなく、
大切なものを壊すことなく、
ユー(富、豊穣を指す池間島の言葉)を
分かち合っていける未来です。

原料となるテリハボクの種集めや下処理は、高齢者や生活に不安を抱える方々に仕事をしてもらえるような仕組みを作っています。雨で畑に出られない日、昼下がり、友人宅に集まっておしゃべりしながら・・・80~90歳の池間島の元気なオカアたちが中心となって、出来るときに、好きな場所でテリハボクの種の殻を割っています。一つひとつ手作業で丁寧に殻を割った種を私たちが買い取り、じっくりと自然乾燥させ、コールドプレス製法で搾って非加熱のオイルを抽出していきます。少量ずつしか生産できず、とても時間がかかりますが、この「ちいさく、ゆっくり」な製法が人や自然を傷つけない「やわらかさ」をもつオイルをつくりだしています。
そして、未来の世代のために、池間島の共有地にテリハボクの植樹を続けています。この植樹は、種の採取地を整備するのと同時に、琉球王府時代から島を守ってきた「海垣(うみがき)=防風防潮林」を再構築するという意味もあります。この海垣が、島の暮らしと美しい珊瑚礁を守ってきたのです。